いきなり降り出す雨、しかし足元は革靴だ。
「やってしまった…」革靴は濡れてしまうと水が靴の中に入ってきてしまう。
今から得意先に行かなければいけないのに…
そういうこともありますよね!
天気予報をしっかりチェックしていても天気は変わりやすいのでいつ雨が降るかなんて100%は分かりません。
革靴でお仕事をされている男性は雨が降ってきたとき革靴が浸水してしまうことが結構気掛かりだと思います。
グッドイヤーウェルト製法が雨に強いという噂を聞いたことがあるかもしれませんが同じ革靴なのに何故強いのか、どんな製法なのかを靴修理職人を経験し今は紳士靴販売員のHIROsophyが詳しくご説明したいと思います。
革靴のグッドイヤーウェルト製法とは何か
グッドイヤーウェルト製法の特徴
特徴は中底の作りにあり中底を切り込んでリブを起こす、または貼り付けるかし中底を木型に仮留めしアッパーを釣り込みます。
そしてアッパーとウェルトを中底リブに縫い付けます。
中底との溝を練りコルクなどで埋めます。
これを中物といいますが必ずしも練りコルクではなく、安価なグッドイヤーウェルト製法の革靴の場合はコストダウンのために別のものが使われている場合もあります。
中底リブにアッパーとウェルトを縫い付け(掬い縫い)ウェルトにアウトソールを縫い付けます(出し縫い)。
中底リブはオールソール交換をする際にソールを剥がすと見ることができ、私が見た中底リブは白い布がほとんどでした。ちなみに私が見た高級紳士靴の中物は練りコルクでした。
グッドイヤーウェルト製法の外観的特徴は縫い目部分を見ると一目瞭然なのですがパッと見た時の印象は
- コバの張り出し部分が広い
- コバに縫い目が見える(マッケイ製法のダミーステッチもあります)
- ソールが厚く重厚感がある
というような特徴がありますが、そこだけ見ても判断ができるものでもないので靴の中を確認したりソールの縫い目の位置などを確認したほうが分かりやすいです。
主にグッドイヤーウェルト製法でつくられているブランド
紳士靴のシューメーカーの中にはグッドイヤーウェルト製法を得意とするブランドとマッケイ製法を得意とするブランドがあります。
今回はグッドイヤーウェルト製法の革靴を多く作っているブランドをご紹介します。
グッドイヤーウェルト製法の革靴を取り扱うインポートのブランド
- エドワードグリーン(EDWARD GREEN)
- ジョンロブ(JOHN LOBB)
- トリッカーズ(Tricker’s)
- チャーチ(Church’s)
- クロケットアンドジョーンズ(Crockett&Jones)
- チーニー(CHEANEY)
- レッドウィング(REDWING)
- ドクターマーチン(Dr.Martens)
これは一部になりますが、英国靴はグッドイヤーウェルト製法で作られていることが多いです。これは革靴の歴史を遡ると見えてきます。
グドイヤーウェルと製法の革靴を取り扱う日本のブランド
- リーガル
- スコッチグレイン
- 大塚製靴
- 三陽山長
- マドラス(パターンオーダーはグッドイヤーウェルト製法)
日本のブランドもグッドイヤーウェルト製法の革靴を多く作っています。
リーガルやマドラスはグッドイヤーウェルト製法だけでなくマッケイ製法の革靴も作っているため比較してみると面白いですね。
革靴のグッドイヤーウェルト製法が雨に強いといわれる理由
一般的な革靴の雨の侵入経路を考える
通常の革靴に雨が侵入する場合は、
- 靴底のステッチから雨が侵入する
- アッパーのステッチから雨が侵入する
- 革靴の履き口から雨が侵入する
ということが考えられます。
つまり革靴の上か下かということになります。
靴底にステッチがあることもアッパーにステッチがあることも革靴の製法上仕方がないことなのです。
ステッチがない靴というのはレインシューズのようなゴム素材の靴になってしまいますね。
グッドイヤーウェルト製法の革靴の雨の侵入経路
次にグッドイヤーウェルト製法の革靴を考えてみましょう。
グッドイヤーウェルト製法が雨に強いといわれる由縁は
- 靴底にステッチはあるが中底を貫通し縫われているわけではないため直接雨の侵入がない
- もし雨が侵入するとするならばウェルトをつたいアッパーに水が染み込み靴の中まで浸透した
- 革靴の履き口から雨が侵入する
大事なポイントとしては「靴底にステッチはあるが中底を貫通し縫われているわけではないため直接雨の侵入がない」ということなのです。これが製法特有の雨に強いといわれる由縁です。マッケイ製法と違いアウトソールと中底を貫通して出し縫いをかけているわけではないので直接的な雨の侵入はしにくいです。
ただアッパーのステッチや履き口からの雨の侵入に関してはグッドイヤーウェルト製法の革靴であっても防ぐことはできません。
グッドイヤーウェルト製法の革靴の中でも雨に強いのはどんな靴か
グッドイヤーウェルト製法の革靴が雨に強いことは分かりましたが、では一体どんな仕様であればより雨に強くなるのでしょうか。
同じグッドイヤーウェルト製法の中にも種類があるのでご説明します。
雨の日には最強なゴアテックス
先程「アッパーのステッチや履き口からの雨の侵入に関してはグッドイヤーウェルト製法の革靴であっても防ぐことはできません。」と記しましたが、この問題を解決してくれるのがゴアテックスシューズなのです。
ゴアテックスシューズの場合、雨のための革靴なので雨が侵入するであろうシュータン部分はアッパーにしっかりと繋がっていたり、アウトソールやアッパーにステッチがあったとしても靴の中にゴアテックスファブリクスを筒状に入れているため雨が侵入することがありません。
またゴアテックスファブリクスは透湿性にも優れており靴の中の湿気は外に逃してくれます。
ゴアテックスシューズの中でも最も通気性がいい革靴は「ゴアテックスサラウンド」というタイプで靴底には一見穴が空いているように見えるものです。ゴアテックスサラウンドは通常のゴアテックスよりも通気性がよくなるため蒸れやすくて悩んでいる方にも向いています。
ただしゴアテックスにも弱点があり、内側のゴアテックスファブリクスが傷んで穴が空いてしまうと100%防水という効果は損なわれます。
靴の中を時々チェックし、小指や親指が当たる部分に穴が空いていないか確認しましょう。
またゴアテックスシューズはオールソール交換ができるブランドとできないブランドがありますので、修理ができるかどうかも確認しておくことをおすすめします。
雨でも滑りにくいラバーソール
雨に強いラバーソール!
レザーソールと比較しても雨に強いラバーソールは
- 滑りにくい
- ソールが雨を吸収しない
という特徴があります。
そのため雨の日にはラバーソールのグッドイヤーウェルト製法の革靴を履くことがより良い選択になります。
付け加えますとラバーソールの中でも凹凸がしっかりあるソールのほうが滑りにくいです。ワークブーツなどで使われているコマンドソールなどがその例です。
レザーソールの場合グッドイヤーウェルト製法であってもレザーソールが雨を吸水してしまいます。レザーソールは濡れることで傷みやすくなるため帰宅後はソールケアが必要になります。
水や埃の侵入を防ぐストームウェルト
押縁は、マッケイ製法で使われるもので縫わずにアッパーとソールの間に挟むようにし圧着します。
極端な言い方をすれば飾りです。
コバは車でいうバンパーのような役割のため、飾り出あっても押縁がないと外観も不恰好になりますし、遮るものがないと直接アッパーに傷がつくようになります。
そのため押縁という飾りをマッケイ製法の靴は付けています。
※細革の呼び方は様々なのですが私が勤務していた靴修理屋ではマッケイ製法は押縁と呼ぶことを統一されていました。
グッドイヤーウェルト製法の場合はウェルトといいます。
ウェルトは細革ともいいアッパー、中底、アウトソールが結合されます。
ポイントはただウェルトとアウトソールを縫い合わせているのではなく掬い縫いをかけジョイントさせているところです。
ストームウェルトとはL字型になったウェルトのことです。
防波堤のような役割をしてくれるため、通常のウェルトよりも水や埃が靴の中に侵入しにくいといわれています。
雨の日にはグッドイヤーウェルト製法の革靴を履こう!
ご紹介しましたように雨の日にはマッケイ製法の革靴よりもグッドイヤーウェルト製法の革靴の方が雨の侵入まで時間がかかるため向いています。
マッケイ製法とグッドイヤーウェルト製法どちらであってもアッパーまで浸かるような雨が溜まった場所を歩くとウェルト部分を超えているためアッパーから浸水してしまいますので、土砂降りの大雨の時はやはりゴアテックスシューズを履くかレインシューズをおすすめします。
マッケイ製法やグッドイヤーウェルト製法だけでなくステッチ部分は一度針が貫通し縫われているため穴が空いている状態です。
つまり穴が空いているということは水などがすぐに侵入してしまうということになります。クラシックな革靴の作りはシンプルなので実際の作りをよく見ると分かりやすいと思いますので「これ水が入ってこない?」と思った時はどういう作りになっているかを見るといいですね。
今回はグッドイヤーウェルト製法の革靴が雨に強いといわれる由縁についてシェアさせていただきました。
靴業界がもっと盛り上がるように私は色々な人に革靴の良さをお伝えしていきます!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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