「月1回のフルメンテナンス」という言葉は靴磨きをする方はよく聞くと思いますが、“フルメンテナンス”とは何をすることかご存知ですか?
今回はそのフルメンテナンスをする理由からやり方まで全て見ませます!!
お肌の古い角質を落とすように、革に付着した古いクリームなども一気に落としスッキリさせましょう!
革靴を月1回フルメンテナンスする理由
毛穴を隠せば革も肌も綺麗に見える
デイリーの革靴のお手入れはブラッシングだけだったり簡易的なもので充分ですが、月1回は古いワックスやクリーム、こびりついた深い汚れをしっかりと落とすことで革の状態は格段に良くなります。
特にハイシャインは完全に毛穴を埋めていく作業のためツルっとした表面は大変綺麗ですが決して革にいいわけではありません。
特に長くハイシャインを施した革靴は目で見ても分かるほど革が傷んできます。ハイシャインは、女性がメイクをする際に毛穴が目立たないように色々なクリームを塗る行為とよく似ています。革靴も同じで毛穴が目立たない方が仕上がりは綺麗に見えますがお肌と同様にリスクがあります。
またハイシャインを施していない革靴も全体的にクリーナーを使い古いクリームを除去することで次に塗るクリームの浸透率も変わりますので月1回のフルメンテナンスを私はおすすめします。
革靴のフルメンテナンスのやり方
私のAlfred Sargentは実は状態が良くない子です。
写真ではつま先にハイシャインをし特別問題がなさそうに見えますが、よく見ると革に細かなシワが入り革靴が「ポリッシュで息ができないよ〜」と嘆いている声が私には聞こえていました。これ以上ハイシャインをするとなるとこの子に拷問をするようなものなので今回フルメンテナンスをし革の状態の改善に努めようと思います!
【用意するもの】
- クロス
- クリーナー
- 馬毛ブラシ
- 豚毛ブラシ
- デリケートクリーム
- 補色用靴クリーム
- 山羊毛ブラシ
- アルコール除菌ウェットティッシュ
革靴の汚れ落とし
まずは馬毛ブラシで埃を払います。コバや革が縫い重なった部分などは汚れが溜まりやすいので念入りにブラッシングをしましょう。
ポリッシュを施してある革靴は一度綺麗に剥がします。完全に全てのワックス・クリームを落とすことに意味がありますので、「せっかくハイシャインしたのにもったいないな…」と思わず革の健康状態を維持するために潔く落としましょう。
紗乃織刷子は日本の職人が丹念に作り上げた「馬のたてがみ」を使った最高級ブラシです。
程よいコシは山羊毛と馬毛の中間くらいで、埃を払ったり仕上げブラシとしてもお使いいただけます。
持ち手は天然のブナの木で作られており長く使い続けることでエイジングも楽しめます。
クリーナーでは落ちないハイシャインを施した部分は豚毛ブラシを使い割っていきます!
「割る!?」と驚かれる方もいらっしゃると思いますが、私は塗り固めたポリッシュは割るのが一番綺麗に落ちると思います。そして短時間で革をスッピンの状態に戻すことができます。
ポリッシュ部分の割り方をご説明します。単純に豚毛のブラシで軽く叩きポリッシュ部分を砕いていく作業です。カンカンと叩けばすぐにポリッシュ部分は割れます。
日本の熟練した職人が厳選した素材を使い一本一本丁寧に作られている紗乃織刷子は、日本製の最高級ブラシです。
持ち手は天然のブナの気を使い、滑って抜けないようにサイドに溝を掘っています。
大事な毛は厳選された豚毛を使用し、払う・光らせる・伸ばすを効率的に行えます。
つま先をご覧下さい。塗り固めたポリッシュ部分を割りました。艶がなくなりマットになったのがお分かりいただけると思います。この作業はほんの数分で終わりますので、クリーナーで無理矢理擦り落とすことを考えると革に負担は少ないです。
ポリッシュ部分を割ることに抵抗がある方は「コロンブスのハイシャインクリーナー」がおすすめです。厚塗りされたポリッシュも落としてくれる油性のクリーナーです。
コロンブス ブートブラックのハイシャインクリーナーは古くなったハイシャインの古い塗膜を落とす専用のクリーナーです。
通常のクリーナーではハイシャインの塗膜は落ちにくく無理に擦ると吟面を荒らしてしまうこともあるため、ハイシャインクリーナーで落とすことで革を傷めることもありません。
本当に落ちるので、一度お試しあれ!
サフィールのレノマットリムーバーを使い古いクリームなどを全体的に落とします。先ほどポリッシュを割った部分もリムーバーで細かな汚れを落とします。
この時クロスは綺麗なものを使うようにして下さい。
フランス製のサフィールが出しているレノマットリムーバーはカビまで落とすことができる強力な中性リムーバーです。
皮革に浸透し油汚れや塩吹きなども落とせます。
他ブランドより強力なため擦り過ぎないように注意して下さい。
全体的にリムーバー で拭き取ると艶感はなくなり、パサパサした印象になります。色落ちした雰囲気にちょっと驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心下さい。すぐにピカピカになります!
クロスは必ず綺麗な部分で汚れを拭き取るようにしましょう。クロスの汚れた部分で汚れを拭き取ろうとしても汚れは落ちません。
保革
全ての汚れやクリーム・ポリッシュを落としたらサフィールのデリケートクリームを入れていきます。
今までポリッシュという厚化粧をしていた肌には化粧水というデリケートクリームが必要です。
革靴は毛穴の汚れが落ちスッピンに戻っています。
サフィールのデリケートクリームはワックス成分があまり入っていないため艶が出ることなく、靴クリームを塗る前の下地クリームとして最適です。
また有機溶剤を含まないためヌメ革にもお使いいただけ、無色なため色移りする心配もなく革小物や革の鞄などに塗ってもベトつきもなく安心です。
革に優しくデリケートクリームを入れていきます。
こちらがデリケートクリームを入れた状態です。デリケートクリーム 自体はワックス成分が入っていないため艶は出ません。そのため見た目に変化はありませんがしっかりと保革されました。
補色
革靴は色落ちしたり、色褪せすることは避けられるものではありません。そこで“補色”をし色褪せしたアッパーの色を元に近づけます。実際は元通りにはなりませんので、薄くなってしまった色を補うイメージです。
今回は「サフィールのクレム1925」という油性クリームを使い補色していきます。
フランス製のサフィールノワール クレム1925は油性の靴クリームです。
フランス高級ブランドのケア用品のOEMも務めるサフィールは最高のクオリティーを保証します。
カルバナワックス、ビーズワックス、シアバターなど天然原料を用いたクリームは革を保革し、奥から光るような着色力の強さも特徴です。
ここで忘れてはいけないのがクリームの色ごとにブラシを用意することです。今回はバーガンディのクリームを使うのでブラシもバーガンディ専用のブラシを使います。
例えば黒い靴を磨いたブラシを使って磨いた場合バーガンディのアッパーが黒くなってしまい望んだ通りの色には補色できません。
そのため、クリームの数と同じだけブラシを用意する必要があります。
私は「サフィールノワールのブリストルブラシ」を使っています!
サフィールのブリストルブラシは100%の豚毛を使用し長さ約12.4cmととても持ちやすいブラシです。
サイドには細かい溝が掘ってあり滑り落ちない工夫もされています。
靴クリームごとブラシは分ける必要があるため、サフィールブリストルブラシくらいの価格のものを数本用意しても良いでしょう。
ペネトレイトブラシでクレム1925を革靴全体に塗り広げ、手早く豚毛ブラシでブラッシングをします。
大きなストロークで早く腕を動かします。しっかりとブラッシングができれば自然と艶が出ます。
補色すると見違えます。革靴にハッキリとしたバーガンディの色が入り艶も出ました。
山羊毛ブラシで仕上げ
この艶をもっと引き立てるために山羊毛ブラシで仕上げのブラッシングをします。
この時ハンドラップで少量の水をブラシに取りながら磨くとより一層艶が出ます。
ブートブラックの熊野筆フィニッシングブラシは広島県安芸郡熊野町で伝統的な技法で製造される熊野筆と同じ技法で作られています。
毛の素材は山羊の産毛と馬の尾先を使い作られているため山羊毛100%の仕上げブラシにはないコシがあり、めっちゃ艶がでます。
初めて使った時は「少し硬いかな」と思いましたがその硬さがポイントでしっかりと毛が反発し適度の摩擦が生まれ驚くほど艶が出たのだと思いました。
この時も手早く行います。
革の状態が良くなりました。
アッパーを見れば状態の良さを感じ取ることができます。目で見て判断ができない方は直接触って確認することをおすすめします。
どうでしょう?
なんと美しいつま先でしょうか。
(自画自賛)
内側の汚れもチェックし綺麗に落とす
革靴の中は知らず知らずのうちに汚れが溜まっています。
月に1度革靴の中まで綺麗にすれば雑菌の繁殖も防ぐことができます。
そしてライニングのチェックも忘れずに行いましょう。腰裏や親指・小指が当たる部分のライニングが破れてはいないでしょうか?
革靴の中はアルコール除菌ウェットティッシュなどで拭き取ります。
私は手が小さいためそのまま革靴の中に手を入れていますが、男性で手が入らない方はアルコール除菌ウェットティッシュを棒などに巻き付け奥に溜まった汚れを掻き出すようにしましょう。
綺麗に見える革靴のライニングは思ったよりも汚れています。
お見せできるものではございませんが、今回は特別にライニングの汚れを披露します。
このようにかなり汚れています!
完成!!
これで全ての行程が終わりました。
ポリッシュを落とすことで革がイキイキしました。
レザーソールも半年に1回程度はお手入れをしよう
レザーソールのお手入れは毎回ではなく半年から1年に1回程度はお手入れをしましょう。
雨に晒され、泥を踏みつけ、あなたの革靴は立派に今まで歩んできました。ここで傷んだソールをお手入れしてあげれば、革靴はもっと長持ちします。
今回「サフィールのソールガード」を使ってお手入れします。
サフィールノワールのソールガードはセサミシードオイル、アボガドオイルなどの天然油分により革底をひび割れや水の浸透から守ってくれます。
革底は革なので必ずお手入れが必要になります。植物性オイル100%多いソールガードを使うことで保革もでき革底に柔軟性を与えることもできます。
レザーソール専用サフィールのソールガードを塗り込みます。更にこくり棒を使いならします。
ハイシャインをしたい!!
フルメンテナンス後ハイシャインをする方はこちらをご覧下さい。
ただし月に1度はしっかりとハイシャインを落としスッピンの状態に戻してあげることをお忘れなく。人間のお肌もそうですが厚化粧は本来の姿から程遠くお肌(革)にダメージがあります。
サフィールノワールのビーズワックスポリッシュは上質な深みのある艶を出すために欠かせないアイテムです。
高級カルバナワックスと蜜蝋が主成分であり、磨くことで革の上に鏡面のような皮膜を作ることができます。
傷を目立たなくさせたい!
傷補修とは靴クリームでは隠しきれないつま先やかかとの傷をサンドペーパーを使い削り取って平らにし目立たなくさせるという作業です。
つま先やかかとには芯が入っているためサンドペーパーで削ることができますが、他の部分には芯が入っていないため削ることはできません。そのため傷補修ができる箇所は爪先とかかとに限定されています。
サンドペーパーには番手という番号が書いてあります。その番号は表面の目の粗さを表しており、粗目・中目・細目・極細目などがあり数字が小さいほど目は粗くなります。
私がよく使う番手は800〜2000番手のものをよく使います。
「うちの子は本当に可愛い」と本気で思っている
靴磨きをすると毎度思うことがあります。それは「なんて可愛い子なのでしょう」と親バカのように革靴が可愛く思えるのです。どこがどう可愛いのかは割愛しますが、それくらい靴磨きを通して革靴を好きになれるのです。ちょっと気持ちが悪い話ですが“愛着”とは持ち主にしか分からない感情ですね。私の革靴達を誰かが見て「なんて可愛いの〜」と思うわけがありませんからね。
そのため革靴に万が一のことが起きた場合はそれはそれは落ち込みます。例えば縁石を蹴っ飛ばし傷を作ったとか、突然の雨に濡れてしまったとか、湿度が高過ぎてカビが生えたとか。靴なので不測の事態が起こっても仕方がないのですが勝手な思いやりが溢れ「どうにかしてあげたい!」と思った結果が“傷補修”などに繋がっています。もちろん靴磨き職人や靴修理をやっていたからこその知識ではありますが、まず一番最初にくるものは“革靴への愛情”故なのです。モノへの執着があればあなたの革靴はあなたから離れることはないと思います。
月1回フルメンテナンスの時に革靴全体をチェックし「おやおや、どうした?何があった?」と革靴に話しかけてあげて下さい。あなたの革靴はきっと喜びます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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