
革靴といえば英国のイメージが強くないでしょうか?
英国のチャールズ皇太子などがおしゃれに英国靴を履きこなしている姿をみるとものすごく恰好よく見えますよね。
色々な英国靴がありますが、今回は英国靴を代表する真面目で品の良さが漂うJOSEPH CHEANEYについてシェアしたいと思います。
ロマンを感じる英国靴
革靴にハマる男性はどこに惹かれるのでしょうか?
私は革靴の魅力の一つにその背景にあると思っています。
英国靴はその革靴を手に取ればすぐに感じることができるロマンが詰まっています。
革靴の街、ノーサンプトン

紳士靴といえば英国靴が有名ですが、その歴史やエピソードも大変興味深いものがあります。
注目すべき点は創業地の「ノーサンプトン」です。
ノーサンプトン(Northampton)とは…
靴の聖地であります!
イギリスの中東部に位置しロンドンから約100kmほど離れたところにあるノーサンプトン州。人口は約20万人、面積は約80㎢。郊外にはネイネイ川を中心に無数の川が流れ牧草地があります。革の鞣作業に使うオークの林が自生する地域です。
中世からイギリスの革の鞣業の中心地として栄えたノーサンプトンはロンドンの人口が増えるとともに畜産業が栄え革靴の材料となる革が安定的に供給されるようになりました。
また革を鞣す際に使われるオーク(樫の木)が自生していることと革の鞣に必要な綺麗な水が近くを流れるネイネイ川や無数の川から得られたことが大きく起因します。
革靴を作るにあたりとても良い条件が揃っているノーサンプトンにタンナーが集まり革の街へと発展し多くの靴職人が集まり靴の聖地となったのです。


イギリス軍と革靴

英国靴だけでなくアメリカ靴であっても戦争や軍隊といったものと革靴は切っても切れない関係にあります。
1642年イギリスの内戦時にピューリタン革命の指導者のオリバー・クロムウェルは軍隊のために5,000足ほどのブーツと短靴の製作を依頼しました。
これは軍隊の機動力を上げるために個人別に足のサイズを測定したそうです。
1812年にはノーサンプトンの人口の1/3は靴工場で働くようになり、手作業の掬い縫いによって作られた英国伝統の「ハンドソーンウェルテッド」は大変履きやすく人気がありましたが、たくさん一気に生産するということには向きませんでした。
19世紀アメリカで発明された「グッドイヤーウェルト製法」によりたくさんの革靴が生産できるようになりいち早く工業化することで1910年から1930年にはノーサンプトンは栄え「靴の聖地」と呼ばれることになりました。
英国靴ジョセフ チーニーの歴史

- 創業者のジョセフ・チーニーはB.Riley社の工場長
- 1886年デズバラにJ.Cheaney, Boot&Shoemakersを作った
- ショップで作られた革靴は地元地域の方に供給された
- 第一次世界大戦の時は工場は1週間で約2,500足のブーツやシューズを作った
- 第二次世界大戦後、ジョセフ・チーニーの孫であるディック・チーニーは海外への供給を開始
- 1966年、輸出部門でクイーンズアワード賞を受賞
- チャーチに買収された
- 2009年、チャーチ創業家がチャーチからジョセフチーニーを買収し再び独立
- 1886年の創業時と同じくカッティングからファイナルポリッシュまでの全ての工程をノーサンプトンで行った
ジョゼフ チーニー開封の儀、スペック紹介!!


JOSEPH CHEANEYをさっそく開けてみます!
私、この瞬間のために生きています!

パッカーン!

シューレースは通っていないため自分で通しましょう。
この状態だからこそワクワクさせてくれますね!

ふむふむ、なるほど。
(英語を訳すと…160以上の工程を8週間かけて作るってことかな)
ジョセフ チーニーのレザーソール

ソールはオープンチャネルです。ソールに溝が掘ってありステッチがその溝の中にあります。
一般的なレザーソールの仕上げ方法はメスチャネルやヒドゥンチャネルという仕上げもあります。

よく見るとレザーソールに模様が付いています。
これは飾りゴテで模様をつけた状態です。
レザーソールが削れてしまうと消えてしまう飾りですが、それでもソールを飾るというのは革靴の美学ではないでしょうか。

革のリフトには化粧釘(飾り釘)と言われる釘が打ってあります。
この化粧釘はブランドによって打ち方が違います。ジョセフチーニーの場合は向かって左に9本、右には5本打ってあります。
私は靴修理をしていた頃化粧釘の打ち方をブランドごと覚えたものです。
リフト交換をした際同じ間隔で化粧釘を打つことで純正に寄せることができます。
街の修理工房でも化粧釘を純正と同じ位置で打つというサービスは行っていると思いますので、もし街の工房に修理を出す際は聞いてみると良いでしょう。

コバの仕上げに注目して下さい!
コバには幾つかの仕上げ方法があり(ソールの仕上げと同様に)ジョセフチーニーは爪コバといわれるコバに突起がある仕上げになっています。
そのほかには平コバや丸コバなどもあります。
中底

中底を見てみましょう!
中底にもジョセフチーニーの文字があり、こだわりを感じさせます。
中底が沈むというのはこの部分が履いた時に体重がかかり下に沈むというわけです。
新品の革靴を一日履くと中底に足の後がついていることに気付くと思います。
美しいピンキング

ピンキング(Pinking)というのも飾りの一種です。
ギザギザにカットされた縁のことですが、このピンキングが革靴をより華やかなものにしてくれます。そしてブローグという穴飾り、親子穴飾りがある革靴の中でもフルブローグというものは①メダリオンのウィングチップ②ピンキング③パーフォーレーションという3つの条件が重なったものを指します。
それ以外にもセミブローグとは①パンチドキャップトゥ②パーフォーレーション③メダリオンの飾りがあります。
またクォーターブローグは①パンチドキャップトゥ②パードーレーションの穴飾りがあります。
シャコ止め(閂)

シャコ止めとは内羽根タイプの靴の羽根が開く箇所と爪先革の接合部に施す補強縫いのことです。
閂、舌閂ともいいます。
裏ハトメ

シューホールの内側を見てみると裏ハトメで補強されていました。
ハトメとはシューホールに取り付けられている金属やプラスティック製のアイレットですが、この裏ハトメとは裏だけ金属がついているものです。
そのため表側には金属はついていないためよりナチュラルに見えます。裏ハトメの付け方はライニングとアッパーの間に金属が挟まっている状態にあるため仮に取れてしまった場合はライニングの上から押し付けても取り付けることはできません。
市革(バック・ステイ)

市革とは革靴の踵の部分を縫い割り上方に補強目的で取り付けた革です。
市革には様々なデザインがあるので比べてみると面白いです!

英国靴はロマンだらけでしょ?
ここまで読んで下さった方は英国靴のロマンがぎっしり詰まった魅力に惚れてしまったことでしょう。
英国靴は「修理をしながら長く使う」という価値観

日本の文明も戦後ものすごい勢いで進み大量消費が当たり前になっていますが、弊害も多く生まれていることは事実です。
その一つに環境問題があります。地球温暖化、気候変動、オゾン層の破壊、酸性雨、塩害、砂漠化、森林破壊、海洋汚染、海洋ゴミ問題、水質汚染、農業汚染、というような環境問題を抱えています。
そして最近話題のSDGs(持続可能な開発目標)というワードをご存知の方も多いと思いますが2030年までに達成すべき17の目標の中に「つくる責任、つかう責任」という目標があります。
「つくる責任、つかう責任」とは少ない資源でより多く品質の高いものを得られるような生産と消費パターンを作り上げることを目指しています。現在、大量生産大量消費されている資源やエネルギーは永遠ではありません。このままではいずれ資源が底をつくことになり地球の存続や私たちの暮らしを脅かすことにも繋がります。
資源を維持しながら消費者のニーズに応えていくにはつくる側が環境や資源に配慮しながら少ない資源でより質の高いものを生み出す技術の開発や生産過程で出るエネルギーや廃棄物の発生の抑制が求められています。
そしてつかう責任において日常において不必要なものは購入しない、食材などは使い切る、フードロスをなくす努力をすることが求められています。
一見当然といえば当然ですが革靴に例えるならば革の鞣作業の際には汚水が大量に出ます。
不必要な数の革靴を大量に作ることは不必要な汚水をたくさん出すことに繋がります。鞣の時に出る汚水の処理というのはかなり大変らしくお金もかかるそうです。
そう考えたとき「革靴を修理しながら長く履く」というのはSDGsの取り組み目標に当てはまるといえます。
環境問題が問われてる現代だからこそ「いいものを長く使う」という革靴の原点に戻るべきだと私は考えます。
革靴が生活の一部になり人生の一部になった

「好きなことを仕事にできていいじゃないか」
知人に言われました。
しかし好きなものと年中対峙するというのは苦しいものです。決して楽なことはなく、茨の道であることは間違いありません。この苦しさは“好き”からくるものです。
“好き”だからこそ革靴に割く時間は膨大であり、“好き”だからこそ革靴に投資をし続けています。
革靴を語るには“好き”であることはもちろんですが実際に革靴を履かなければ何も分かりません。人から聞いた知識だけで何とかしようとする方もいますが、たくさん履いている人こそ革靴がどんなものか肌で感じわかるようになります。
革靴の本当を知りたいと思う方は100の質問するよりも1の経験のほうが役立ちますのでたくさんの革靴を試すことをおすすめします!
革靴の経験値を上げるためたくさんの革靴を履くことでそれは生活の一部となり、長く続けることで生活の一部から人生の一部になりました。
人生は真っ白な紙に自分で好きなことを書き足していく行為だと思います。
私は真っ白な紙に「革靴」と書きました。
あなたは何と書きますか?
最後までお読みいただきありがとうございました!

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