リーガルなどで有名な「ガラスレザー」はよくお手入れ不要と言われますが、実際はお手入れをしないと曇っていき見窄らしい革靴になってしまいます。
今回は「ガラスレザーのお手入れと特徴」についてシェアしたいと思います!
「ガラスレザーって何でこんなに艶があるの?」
「ガラスレザーってどんなレザー?」
「ガラスレザーってエナメルではないの?」
「ガラスレザーってどんなお手入れをするの?」
日頃私が接客でよくお客様から質問される事項をご説明します!
そしてガラスレザーという特性から使わない方がよいケア用品もあります。
使ってしまうと“致命傷”を与えてしまうかも!?
ガラスレザーとはどんなレザーか?
ガラスレザーは通常のスムースレザーとは全く比較にならないほどの艶を放っています。
きっと誰が見てもその違いはお分かりいただけると思います。
しかしガラスレザーとは一体どんなレザーなのか、何が他のレザーと違うのかという疑問を解説します。
ガラスレザーとエナメルの違い
パッと見で分かる違いとしてはガラスレザーよりもエナメル(パテント)はより艶があります。
エナメルの方が濡れたような艶感がありギラギラした印象があります。
女性のパンプスなどにはエナメルが多く使われ、綺麗で上品な印象を与えます。
また礼装用として使われる紳士靴のオペラパンプスなどはエナメルが使われています。
ガラスレザー
製造工程でクロム鞣した革をガラス板、またはホーロー鉄板に張って乾燥することからガラスレザーと呼ばれています。乾燥後は革の表面をサンドペーパーで擦りその上に合成樹脂と顔料を塗り仕上げます。
光沢があり頑丈で雨にも強くお手入れが楽です。
エナメル
厳密には「エナメルドレザー」といい略して「エナメル」と呼んでいます。
エナメルはパテントレザーともいわれ革の表面に樹脂を塗って光沢を出した革のことです。樹脂に覆われているので水に強くお手入れも簡単ですが、厚化粧なためしわが出やすいというデメリットもあります。
ガラスレザーの特徴
ガラスレザーはスムースレザーの革靴よりもハッキリとした艶があり、輝いています。
そしてガラスレザーは樹脂コーティングされているため水にも強くお手入れも乾拭きや少量の靴クリームで艶が出るため楽ちんです。
ガラスレザーのメリット
見た目が美しい
靴磨きでワックスや艶出しのクリームを使い磨き上げると艶が出て綺麗に見えます。
その原理と同じで最初から艶があるガラスレザーは綺麗に見えるのです。
さらにドレッシーに見えるため華やかな場面で相応しい革靴といえます。
汚れがこびりつきにくい
ガラスレザーは樹脂加工されているため表面はツルッとしており汚れがこびりつくことがあまりないため拭き取りだけで汚れが落ちます。
そのためお手入れは通常のスムースレザーと比べても楽です。
雨の日でも履ける
ガラスレザーは樹脂加工されているので雨などの水がスムースレザーのようにすぐに浸透してしまうことがなく、比較的水に強いとされています。
しかし表面からの水の浸透はなくてもステッチ部分からはやはり水は浸透してしまうため“水には強いが注意は必要”と覚えておいて下さい。
ガラスレザーのデメリット
エイジングがしにくい
エイジングは革ものを持った者の楽しみの一つですが、残念ながらガラスレザーはエイジングがしにくいです。
その理由はガラスレザーは樹脂加工されており靴クリームなどが浸透しないためです。
磨けばもちろん艶は出ますが通常のスムースレザーのように使っていくうちに深みが増す、といった革特有の変化がないのです。
ひび割れ
ガラスレザーの特徴として「ひび割れ」があります。
これは履き皺がしっかり入りシューツリーを使ってもなかなか伸びにくいことと通常のスムースレザーと比べても樹脂加工されたガラスレザーは革の柔軟性は低いです。
屈曲された部分が深く皺が入り何度も屈曲することによりその履き皺から切れてしまったりひび割れてしまったりすることがあります。
これはガラスレザーの特徴の一つのため完全に回避する術はありません。
艶があるため仏事向きではない
テカテカピカピカした革靴は仏事向きではありません。
「ガラスレザーもお手入れしなければ曇るから葬式で履いてもいいか」と言わずに仏事はマットなフォーマルシューズを選んで下さい。
革靴のガラスレザーのお手入れ方法
ガラスレザーのお手入れですが、今回は私のおすすめのやり方をご紹介します。
通常ガラスレザーは「乾拭きでも十分」と言われますが、ガラスレザーといえ使っているうちに光沢が失われていきます。失われるというのは“曇っていく”という表現が適切かと思います。
その場合お手入れをすることで光沢は復活しますが、ガラスレザーをより綺麗に見せるための些細なテクニックをご紹介します!
「靴磨き」は汚れの状態によって適宜工程を変えることをおすすめします。
それは例えば自宅を掃除する場合汚れの状態によって何を使ってどれだけ時間をかけて掃除をするのかということと非常によく似ており誰もが「汚れていなければ軽く掃除をするだけ」と言うでしょう。
靴磨きも汚れていなければある程度工程を割愛して構いませんし、汚れていない革靴を毎回フルメンテナンスするというのは革の負担になります。
乳化性クリームを使う場合
今回使用する靴クリームは乳化性の「イングリッシュギルド」です。
コロンブスのブートブラックもお勧めです!
少量を塗り込むだけで非常に強い艶が出ます。
今回私が使用しているのはイギリス製の靴クリーム イングリッシュギルドです。
イングリッシュギルドはイギリスのノーザンプトン近くの製靴工場の靴クリームや仕上げ剤として供給している会社が作ったナチュラルワックスを使用した蜜蝋入り靴クリームです。
実際に使ってみるとスーッと馴染んで使いやすいです。また大変良い香りがするので個人的には大好きなブランドです。
ポイントは薄塗りです。
ガラスレザーは靴クリームを吸い込む素材ではないため沢山塗ることに意味がありません。
イメージは表面だけに艶をつけていく作業です。
薄塗りした靴クリームをしっかり伸ばすために豚毛ブラシでしっかりとブラッシングします。
私が使っているブラシは「かなや刷子の豚毛ブラシ」です。
豚毛ブラシでしっかと靴クリームを伸ばさないとクリームにムラができその跡が残ってしまうため、豚毛ブラシで満遍なく伸ばしましょう。
豚毛ブラシでしっかり伸ばした後は乾拭きをします。
私が使っているのは「Parabootのポリッシュグローブ」です。
羊毛100%でフサフサしておりしっかりと余った靴クリームを拭き取ってくれます。
私が使用しているポリッシュグローブはパラブーツの羊毛100%を使用したフランス製のミトンです。
様々なポリッシュグローブが市販されており私もいくつか持っていますが、パラブーツのグローブは一番フワフワしています。
ぜひ一度100%羊毛のフワフワ感を体感して下さい。
完了!
簡単な工程でガラスレザーの艶感は戻ります。
これがお手入れが楽だと言われる理由です。
油性ワックスを使う場合
今度はワックスを使う方法です。要領は同じですが、乳化性クリームよりも手軽に使えます。
私が今回使うのは「SAPHIRノワールのビーズワックスポリッシュ」です。
サフィールノワールのビーズワックスポリッシュはフランス製の高級カルナバワックスと蜜蝋をで作られたワックスです。深みのある艶を作り上げることができ、つま先や踵のハイシャインだけでなく全体的に光らせる時にも向いています。
ソフトワックスでもお使いいただけますが、ご自分のお好みに合わせてドライワックスにすると大変使いやすくなります。
ワックスもクロスに少量とります。
少量のワックスを全体に満遍なく伸ばします。
ハイシャインとは違い厚塗りはせずそのまま豚毛ブラシでブラッシングをするだけです。
豚毛ブラシだけではブラシをかけた筋が残るためしっかりとポリッシュグローブで拭き取ります。
ピッカピカ!!
【衝撃画像アリ】ガラスレザーには使ってはいけないケア用品
クリーナー、大量の靴クリーム、
防水スプレーは
使わないで!!
クリーナーを使うと表面の合成樹脂が溶けるというような現象が稀に起こります。
必ずしもこの現象が起きるわけではないと思いますが、私が知る限りでは多く起こる現象です。
合成樹脂が溶けるとベタベタして再起不能を感じますが、リカバリーすることは可能です。
落ち着け〜
落ち着け〜
靴磨きは「リカバリー力」が一番重要なのです!
さっそくリカバリーするぜ!
ハンドラップは靴磨き職人が使っている水を少量だけとるためのディスペンサーです。
金属部分を軽く押すと少量の水が出ます。
また水だけでなくエタノールを入れることもでき、ハイシャインをする際はエタノールのアルコールが揮発しにくくなり大変便利です。
まずはワックスを塗り込みます。合成樹脂が溶けた周辺部分をハイシャインをするイメージで厚塗りします。
水を使う時はクロスに染みた水分量を調整するために掌や甲で調節をします。
私はエプロンをし作業をしていたのでエプロンで拭き取り調節していたました。
ワックス→乾燥→水の順番で繰り返し厚塗りをしていきます。
丁寧にワックスを塗り込むことにより合成樹脂が剥げてしまった部分のリカバリーはできました。
見ても分からなくくらいになればOKです。
靴磨きはリカバリーする力がないと様々な状態の革靴に対応できないのが現実です。
自分自身の比較的丁寧に履いている革靴を磨くよりも、傷や汚れ、革の状態をよく見て最適なクリームを選ぶところから靴磨きは始まりそこに醍醐味があります。
私は臨機応変にクリームを変えながら磨いていたのでそれはまるでお医者様が患者様の症状に合わせて薬を調剤している感じによく似ていると思っていました。
おすすめのガラスレザーを使ったブランド5選
リーガル《REGAL》
言わずと知れたガラスレザーの革靴といえばリーガルのドレスシューズです!
リーガルはたくさんのガラスレザーのアイテムを取り揃えているため、その中から自分の足に合う1足を見つける楽しみがあります。
リーガルの315Rはグッドイヤーウェルト製法で作られソールは合成ゴムを使用しています。
またリーガルの中でも踏まず部分を絞った美しいシルエットをしているため大変人気があります。
ウィズは2E程度ですが、リーガルは他のブランドよりも大きめな作りのためワンサイズほど落ちると思います。
スコッチグレイン《SCOTCH GRAIN》
スコッチグレインのLUSTERは百貨店限定モデルとして販売されているこだわりの詰まった1足です。
ラウンドしたトゥにガラスレザーの光沢感が美しい1足です。
「ラスター」シリーズに使用したアッパーの甲革は、兵庫県姫路にて製造された「ガラスレザー」です。
ガラス革は、樹脂(塗膜)が厚く塗られており、メンテナンスが容易で時間をかけて磨かなくてもツヤで出るのが特徴です。雨や汚れに強いので、表面上の汚れを取るような軽いお手入れをするだけで光沢が得られます。
SCOTCH GRAIN オフィシャルサイト
チャーチ《Church’s》
チャーチのポリッシュドバインダーカーフはチャーチが開発した素材でガラスレザーのような特徴を持つが防水性などが優れておりポリッシュドバインダーカーフは美しい艶が特徴です。
通常のガラスレザーにさらに改良を重ね防水性を高めています。
ジーエイチバス《G.H.BASS》
1876年George Henry Bass氏によりアメリカで創業された老舗ブランド。
キング・オブ・ポップのマイケルジャクソンが愛用していたことでも有名で、このローファーのサドル部分に1セントのコインを挟んで多くの学生が履いたことからコインローファー(ペニーローファー)と呼ばれるようになりました。
サッと履けてマッケイ製法なので屈曲もよく楽ちんな革靴です。
サイズ感は小さめで、足が華奢な方が向いています!
ドクターマーチン《Dr.Martens》
ドクターマーチンのレザーの表記は「スムースレザー」になっております。
しかし実際のドクターマーチンのアッパー素材は「ガラスレザー」と言って過言ではないと思います。そのためドクターマーチンのお手入れはガラスレザーと同じやり方でご紹介します。
ガラスレザーという言葉にピンときていなかった方もブランドと商品が分かると「なるほど!」と思っていただけたと思います。
割と身近にガラスレザーの革靴はあるので、ぜひコレクションの1足に加えてあげて下さい。
【哲学的思考】考え方を変えれば見える世界は変わる
「ガラスレザーは安価で革靴としては良くない」というお声もよく聞きますが、革靴というのは適材適所で使うことが大事だと私は思っています。例えば初めて革靴を履くという新社会人の方がいきなり「毎日革靴を磨き綺麗な状態を維持する」というのは難易度が高いことですよね。
そこでガラスレザーの革靴を選ぶことでその負担を軽減してくれます。お手入れはもちろんのこと初期費用をかなり抑えることができ経済的であることは間違いありません。
初めて革靴を履く方が心配していることは
- 革靴を数足揃えるための費用
- 革靴のお手入れ方法
- 革靴の維持費
ですよね。初めて革靴を履くという新社会人の方はこの3つの点を大変気にしていました。
ガラスレザーの革靴を選ぶというのは、この3つの問題をある程度クリアできるものと考えます。
このことから私は革靴のファーストシューズとしてガラスレザーを選択するというのはとても良いと思っています。
考え方とは自由なものです。
ネガティブに考えようと思えばどんなこともネガティブになりますし、考え方一つでネガティブからポジティブになることは簡単なことです。
忘れてはいけないことは「あなたは自由の世界で生きている」という現実です。
私は人生においても“理論的に考え前向きでいること”はとても大事なことだと思います。
根拠のないことに怯えて前に進めなくなるより、正しい知識から導き出した結果により未来を恐れない心が明るい将来に繋がると思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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