スエード靴はスーツでもカジュアルコーデにも合わせることができて汎用性に優れているのだけど、雨に濡れるとシミになるしお手入れの仕方は分からないから…と敬遠していませんか?
そんな方にスエードの本当のお手入れ方法を知っていただき、遠慮なく躊躇いなくスエード靴を履いて欲しいと私は思っています。
そのために今回はスエードという素材に焦点を当ててお手入れの仕方をシェアします。
元靴磨き職人ならではの裏技をご紹介します!
実践することで応用もできますので、スエード靴を用意し一緒にやってみましょう。
スエード靴を大切に長く履くために必要なお手入れ知識
【基本編】スエード靴のお手入れ方法
基本的なことを学ぶことで応用が可能になります。
スエードという素材の特徴をまずは知りましょう。
①ブラッシング
汚いです…
相当汚いです…
スエードの宿命のようなもので、どうしても埃は付着しやすく気づくと埃が積もっています。
まずはスムースレザーと同じくブラッシングをします。
革靴の磨きはまずはどんな時もブラッシングから始まります。
スムースレザーの場合は馬毛ブラシでブラッシングをしますが、スエードの場合は毛を起こす意味もあるため豚毛のブラシでブラッシングを行います。
②スエード用補色スプレーでカラー補修
スエード靴は色褪せしやすい素材です。(退色)
乾燥や蛍光灯、日光により徐々に色が抜けていき気づくとスエードの色が薄くなっていることがあります。
スエード素材は靴クリームで補色することができないので、スエード用補色スプレーを使用し補色します。
③再度ブラッシング
スプレー類をスエードに吹いたときは、その後ブラッシングを忘れずにしましょう。
スプレー類を吹くと起こした毛が再び深い眠りにつくことがありますので、もう一度眠りにつかないようブラッシングをして起こしましょう。
④スエードのお手入れ完了
黒いスエードはより黒く見せることで美しさが蘇ります。
【応用編】スエード靴のお手入れの裏技6選
基本的なお手入れをやっても改善しない汚れやテカリなどは「裏技」を使うことで簡単に綺麗になります。ぜひ「裏技」を使ってスエード靴を綺麗に保って下さい。
《裏技1》スエード靴には防水スプレー
スエードには防水スプレーが有効です。
スエード以外にも防水スプレーは有効ですが、スエードはお手入れのバリエーションが少ないため汚れが付着しないという方法があればその方がよく、まさに防水スプレーがその役割を果たしてくれます。
全てのお手入れの後に仕上げとして防水スプレーを吹きかけることをおすすめします。
《裏技2》スエード靴の汚れに使える天然ゴムのスエード用クリーナー
スエード用クリーナーと呼んでいますが実は…
生ゴムです。
私は修理屋で働いていたとき、クレープソールの修理後この生ゴムが床によく落ちていたため拾ってボンド染みなどを除去するために使っていました。
そのため私にとって生ゴムは部材の端材なのです。
生ゴムを使うと汚れを巻き込んで取ってくれます。
生ゴムの角を使って軽く擦るだけです。
綺麗な面で擦ることを意識し、汚れた面はカッターなどで使い切り落とし綺麗な面を出して使います。
コロンブス:スエードクリーナー
スエードやヌバックなどの起毛に使える天然ゴム100%のクリーナーです。
使い方は実に簡単で「汚れたところを軽く擦るだけ」です。
低温の場所に置いておくと硬くなり、暖かいところに置くことで柔らかくなります。
また暑いところに置くと溶けベタつくことがあります。
《裏技3》スエード靴の汚れに使えるスニーカーケア ガムクリーナー
コロンブスのガムクリーナーは天然ゴムと比べると少し硬く文房具の消しゴムに近い感じです。
ガムクリーナーも天然ゴムと同様に汚れがついている部分を軽く擦ります。
強く擦らず角を使い軽く擦るとよいです。
ガムクリーナーで擦った後は白くなるため、ブラッシングをします。そして毛を起こす役割もあります。
コロンブス:スニーカーケア ガムクリーナー
アッパーやソールについた汚れを落とす塩化ビニル樹脂です。
使用方法は、白いガムで優しく擦り、汚れを落とします。油汚れなどにはグレーのガムを使います。
グレーのガムにはサンド(粉ヤスリ)が入っており強く擦ると革に傷がつく恐れがあります。
《裏技4》スエード靴の汚れや毛並みに使えるサンドペーパー
私が最もよく使う道具「サンドペーパー」!
安価で角を作ることが容易で、番手もたくさんあるため状態や素材によって使い分けることができます。
シートで購入すればかなり使えます。
サンドペーパーのシートを4cmに切って使うと使いやすいですが、表面にカッターの刃を当てるとカッターの刃はすぐに毀れてしまうため、ガムテープを裏面に貼ってそのまま手で引き千切って使うと真っ直ぐに千切ることが可能です。
サンドペーパーは広範囲を均一に研磨することができます。
表面の目の粗さは番手といい粗目#40〜#100、中目#120〜#240、細目#280〜#800、極細目#1000〜となり数字が小さいほど粗目になります。
私がよく使っている番手は粗目は使わず細目程度から使います。
仕上げでは#1000〜#2000を使い表面を整えます。
スエードに対し使う場合は#800以上を使います。粗いものを使うとスエードの場合は毛羽立ちが目立つようになるため#800程度から様子を見ながら使い分けます。
《裏技5》スエードの毛並みのムラを修正する
スエード素材に良くあるこれってハゲ!?
実際に毛がなくなっているわけではなく、毛が寝ていることでハゲているように見えるのです。また毛が寝てテカっている場合もあります。
まずは強制的に寝ている毛を起こします!
ナイロンと真鍮でできたスエード用ブラシで手首を返すようにハンドルを動かし毛を起こします。
ブラッシングをしても毛が起きない場合は、サンドペーパーを使います。
サンドペーパーを使うと毛並みが均一になります。
スエードの状態に応じて毛並みが柔らかい場合の番手は細かいものを使用しましょう。
粗い番手を使うと毛がバサバサと長くなるため、もし毛足が伸びてしまった場合はライターを使い表面を整えると綺麗に見えます。
《裏技6》最終手段!汚れたスエード靴を洗う
あ、あ、洗うの〜!?
スムースレザーの革靴を洗うときはサドルソープを使いますが、スエードを洗うときはオムニローションを使います。
スエードを洗うことには抵抗があるかもしれませんが、洗うことで生ゴムなどでも落ちなかった汚れが落ちることがあります。
ビルケンシュトックのフットベッドは実はスエード。
足型が気になったときはオムニローションで洗うことで見違えるほどに綺麗になります。
びちゃびちゃ…
洗った後はしっかり水気は取ってあげます。
いかがでしょう?
気になっていた黒い足型が落ち全体的に白くなりました。洗うことでロゴの文字が薄くなってしまうことはありますが、衛生面を考えるとロゴの文字が薄くなっても綺麗になった方が気持ちが良いですね。
素材:起毛の種類を知る
起毛と一言でいっても色々な起毛の種類があるため、覚えておくと革靴のデザイン性や触り心地が違うこと分かり革靴を見る目が変わることは間違いないです。
私の感覚ですが、スエードよりもヌバックはサラサラした感じがします。
今回は3種類の代表的な起毛をご紹介します。
スエード
スエードとはクロム鞣のカーフ、成牛、山羊、羊などの吟付きの革の裏側を細かく起毛した革のことです。
起毛による表面張力で撥水性が高まるため、雪深いスウェーデンでは手袋や靴に使用されていました。
これがスエードがスムースレザーと比べて雨の日に向いている理由です。
ヌバック
ヌバックは吟面をバフ掛けし起毛したものです。
スエードと混同してしまいそうだが、スエードは裏革、ヌバックは表革の違いがあります。ヌバックの名前の由来は「新しいバックスキン」という意味からきています。(neo buckskin)
スエードより毛足が短く平坦で滑らかな質感が特徴です。
ベロア
牛革の裏革をバフ掛けし起毛させた革です。
スエードよりも毛足が長く粗く、床革をバフさせたものは床ベロアといいスエードよりも安価であるという特徴がります。
スエードを制する者は革靴を制する
「スエードはちょっとお手入れが…」
と敬遠していた方も、実際にお手入れの方法を知ると難しくないことがお分かりいただけたと思います。
スエードにはスムースレザーにはない柔らかな印象とカジュアルさがあります。
今ではスエード素材の撥水レザーの革靴も発売されているため、遠慮なくスエードを雨の日に履くことができます。スエードは毛足が長いため「雨の日用の革靴」とも言われています。毛足が長いと靴の中に雨が浸透する前にフサフサの毛によって防いでくれるので実は雨の日におすすめの革靴といえます。
足への当たりが優しくスムースレザーよりも革が伸びやすく包み込まれるようなフィット感があるスエードです。ぜひお試し下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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