「革靴は小さめがいいって以前店員さんに言われたんですけど痛くて」というお客様がたくさんいることを私は承知しています!
何も知らない方がこの会話を聞くと「その店員は嘘を教えたのか!?」と思うかもしれませんが、“革靴は小さめがいい”というのは本当のことです。
今回は“革靴は小さめがいい”という理由を紳士靴販売員の視点からお伝えします!
これを読んで下さればきっと納得して下さると思いますので最後までお付き合い下さい。
私が新品の革靴を履いた感想を本音で語る
足が痛い…
えーーーーーーん😖
“新品の革靴の痛さはどの程度か”なんてあまり披露するものではないのですが、今あなたが革靴がキツくて足が痛く「革靴は小さめを選ぶなんて嘘だ」と思っているとしたら紳士靴販売員の私の経験も一読して欲しいなと思います。
販売時にはここまで衝撃的な話はしませんが、全て事実です。
- 2時間履いたら休むほど痛い
- どこが痛いのか説明ができないほど痛い
- 足が骨折したんじゃないかと思うほど痛い
- 何故こんな高いお金を出して痛すぎる革靴を買ってしまったのか後悔する
- 足がアザだらけになる
- 骨が歪んだのではと心配になる
何足もクラシックな革靴を持っていますが、とにかく“激痛”でした。
しかし数ヶ月ほどで驚くほど履きやすくなり、全くストレスを感じないほどになるため「革靴は小さめのサイズを選び履いて革を伸ばすことで自分の足にフィットしたものになる」という認識になります。
もちろん革が伸びるといっても限界があるため伸びきらない場合もあるためサイズ選びは重要です。
新品の革靴を履くと足が痛くなる理由
革が伸びきっていない
革靴の場合ある程度履かなければ革が伸びないことは多々あります。
もし今あなたの革靴がキツくて痛い場合は革が伸びきっていないかもしれません。
サイズが合っていない
革靴は大き過ぎても靴擦れになりますし、小さ過ぎてもマメやタコといった足のトラブルを引き起こすので大きくても小さくても良いことはありません。
革靴の「サイズが合っていない」というのは革靴が「フィットしたサイズではない」という意味です。
革靴はピッタリなサイズが足にいい理由
足が疲れにくい
足にピッタリしたサイズは足と一体感があり一緒に動いてくれるため疲れにくいです。
大き過ぎるサイズを履いた場合は無意識に足が革靴を持ち上げながら歩くので、革靴と足の間に隙間が生まれ疲れます。その疲労は蓄積され一日その革靴を履き続けた場合、全身の疲れに繋がりグッタリするでしょう。
足に無駄なストレスがかからない
大き過ぎるサイズの革靴を履いた場合、靴の中に隙間がたくさん生まれ歩くたびに擦れることになります。ひどい場合は出血し、皮膚がめくれてしまいます。
靴擦れはピッタリしているから起こると思っている方がいますが、それは逆です。大き過ぎるから靴擦れは起きる場合が多いことを忘れないで下さい。
足のトラブルを防ぐ
革靴のサイズが小さ過ぎた場合足が窮屈な状態が続き、小指にマメができたり中趾骨の下あたりに魚の目ができたりします。
マメやタコができた場合は革靴のサイズが小さ過ぎるというサインです。
そのままの状態が続くと足にも良くないため、一度サイズを見直してみることをおすすめします。
革靴を自分の足にフィットさせるための大事なポイント
グッドイヤーウェルト製法は中底が沈むことを考慮する
グッドイヤーウェルト製法は中底の下にコルクや中物を詰めています。体重がかかることによりその中物は下に沈みます。中物が沈むと靴の中の容積が新品の革靴よりも大きくなります。
そのため試し履きの段階で余裕があった場合は中底が沈むことでサイズ感はかなり大きくなってしまいます。
「最初はピッタリしていたのに、今はブカブカする」という現象は中底が沈んだことによって起きているともいえます。
最初から中底が沈むことを考慮し小さめのサイズをお勧めしています。
革は伸びることを想定する
「最初はピッタリしていたのに、今はブカブカする」という現象のもう一つの原因は単純に革が伸びてしまったということもいえます。
中物がない革靴であっても革が伸びてサイズ感がワンサイズほど新品と変わってしまうことがあります。それはおかしなことではなく革は力がかかることにより伸びてしまうものです。伸びた革は再び元のサイズに戻ることはほぼありません。
そのため革が伸びてしまうとサイズ感は大きくなり過ぎ歩きにくくなるので、新品の試し履きの段階で小さめをお勧めしています。
革靴を買うときは夕方以降に選ぶ
小さめをお勧めすることの多い紳士靴販売員ですが、ただ小さめの革靴を選んでも最終的に足に合ったサイズになるとは限りません。
そこで小さめの革靴を選ぶ注意点をご紹介します。
夕方以降は脚が浮腫んでおり、朝の脚よりも大きくなっています。
繊細なサイズ感を求める革靴の場合は浮腫んでいる状態で合わせていただく方がいいという理由です。
“朝ピッタリだった革靴が夜になるとピチピチで足が入らないんだけど、何で?”という方は脚が浮腫んでいる可能性があります。
からだのなかで、もっともむくみが起こりやすいのが脚です。
心臓から遠い位置にあって血液の流れが悪くなりやすいことと、重力の関係で水分がたまりやすいからです。 脚のむくみは一般に、立ち仕事の人に多い症状ですが、実はデスクワークの人にもよくみられます。どちらも同じ姿勢を続けることで、脚の組織液(水分を含む血液、リンパ液など)の循環が悪くなり、細胞のすき間などに水分が停滞するからです。 また疲れがたまったときや、睡眠不足になったときなどにも、脚のむくみが起こりやすくなります。これは血液を送り出す心臓の働きが低下するためです。
中高年になって脚の筋力が低下した場合にも、むくみが起こりやすくなります。脚の筋肉(とくにふくらはぎ)は、血液を心臓に戻すポンプの役割をしているため、筋力が低下すると血液がうまく戻らなくなり、血液中の水分が停滞するからです。 こうした脚のむくみの多くは、一過性のもので、ひと晩寝ると治まる程度なら、あまり心配はありません。
注意したいのは、病気が原因となる脚のむくみです。原因には、心臓や肝臓、腎臓など、さまざまなケースが考えられます。むくみから重大な病気が発見されることもあるので、なかなか治らない場合には受診しましょう。
オムロンヘルスケア より
夜になると細胞の隙間に水分が停滞するので脚が浮腫むので浮腫んだ状態で小さめの革靴を選ぶことで夜に履いても履けないほどキツくなることはないのです。
革靴を買うときは普段履く靴下を履いていく
小さめのサイズを選ぶときに重要になるのが“靴下”です。
繊細なサイズを選ぶ以上普段履く靴下で試し履きすることをお勧めしています。
試し履きする時の靴下が厚すぎると普段との靴下と差がありすぎ結局革靴が緩く感じてしまったり、逆に普段より薄手の靴下で合わせた場合はいざ革靴を履こうとするとキツすぎて痛みを生じることになります。
革靴は靴べらを使い履く
些細なことのように感じますが、「靴べらを使って革靴を履く」というのは本当に大事なポイントです。
靴べらを使うことでピッタリなサイズの革靴でもストレスなくサッと足を入れることができます。
靴べらを使わずに無理矢理足を捻じ込む方やピッタリなサイズでは簡単に履けないという理由から大きなサイズを選ばれる方がいますがナンセンスです。
しっかり靴べらを使うことで靴にも無駄な負荷を与えず傷みを最小限にできます。
革靴を履く方は靴べらを持ち歩きましょう。
プレメンテナンスをし革を伸ばすことでストレスを最小限に
新品の革靴を購入し嬉しさのあまりそのまま外で履くのはちょっと待って下さい!!
大事な革靴だからこそまずプレメンテナンスをお忘れなく。
プレメンテナンスをすることで革に潤いと柔軟性が生まれて新品の革靴特有の痛みが革が伸びることで軽減されます。
そして新品の革靴はバックヤードに眠っていることが多いため油分も失われ革は乾燥していることもあります。
栄養を与えることで革は柔軟性を取り戻し傷などにも強くなるので、まず履き下ろす前にプレメンテナンスをすることでより早くあなたの足に馴染むようになります!
ストレッチャーを使って革を伸ばす時は最後の手段
ストレッチャーという革靴の幅を伸ばす機械がありますが、これは最終手段として使うことをおすすめします。
理由は、ストレッチャーは機械による力で半ば強制的に革を伸ばすものであり足の形に沿って伸ばすことはできません。
強制的に革を伸ばした場合足の形とは違った形で伸びることもあります。
そのためストレッチャーを使って伸ばす場合は履いてみてもどうしても伸びない場合に使います。
ポイントストレッチャーというものもあり、これは一部分だけ伸ばすものです。
「小指だけが当たる」というような一部分だけ伸ばしたいときには大変便利です。
革靴のサイズの選び方
フィッティングの時は踵を目一杯カウンターの方へ寄せます。
私がトリッカーズのバートンをタイトフィッティングで合わせた時の写真です。踵に隙間が全くありません。
踵周りの長さが自分の足の踵の長さと合っていることも重要です。
革靴の踵の方が大きい場合、踵に隙間が生まれ歩くたびに踵が動いてしまうこともあります。
足長だけではなくボールジョイント部分もフィットしているか確認します。ボールジョイント部分があまりにきついと巻き爪になることもありますので「小さめ」とは言いますがどの程度革が伸びるのか計算と予測する必要があります。
甲周りは例えば内羽根式の革靴の場合は羽根がV字に開いているかも見ましょう。
内羽根が革がまだ伸びていない段階でピッタリ閉じてしまっている場合はサイズが大き過ぎる可能性があります。
踵周り、ボールジョイント、甲周りがしっかり革靴とフィットしていることを確認しましょう。
手で触りどの程度の余裕があるのか、また手で握っても凹まないほどキツい場合は靴下が厚手になったり浮腫んだだけですぐに痛くなることもありますのでその場合はサイズを上げ再度試し履きしましょう。
革靴は大は小を兼ねない
日本のことわざに「大は小を兼ねる」という素晴らしい言葉があります。「大きいものはそれ自体の役割の他に小さいものの役割も果たすが小さいものは大きいものの役割を果たすことができない」という意味ですが、革靴に関して大きなサイズを履くことでオールオーケーにならないことが分かっていただけたと思います。
大き過ぎず小さ過ぎずピッタリのサイズが足には一番いいのです。若干きついかな?というサイズを選び自分の足の形に沿わせて革を伸ばすことであなたの足にピッタリの1足ができあがります。
「革靴は小さめがいい」という理由をご説明しましたが、いかがだったでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました!
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