革靴のソールには大きく分けてラバーソールとレザーソールの二つがありますが、皆様は使い分けができているでしょうか?使い分けができると革靴が長持ちしますし、革靴を履いた時のストレスは軽減できます。
そこで元靴修理職人、現役紳士靴販売員のHIROsophyが考えるラバーソールとレザーソールの違いをシェアしたいと思います。新しい革靴を購入しようと思っている方や、ご自宅にある革靴のベストな使い方に悩んでいる方はぜひご参考になさって下さい!
ラバーソールのメリット・デメリット
どんなものでもメリットとデメリットが存在します。これは100%完璧なものはないという証明ですので、メリットとデメリットを考慮し新しい革靴を選んでいただきたいと思います。もしご自宅にある革靴でどんな時に履くのがベストなのか分からないという方もご参考になさって下さい。
ラバーソールのメリットは?
グリップ力
グリップ力というのは言い換えると「滑りにくい」ということです。ラバーソールの場合靴底に凹凸があるものが多いためしっかりと地面を掴み滑りにくい仕様になっているものが多く見られます。駅の階段や濡れた鉄板の上、また大理石のようなツルツルとした場所でも滑りにくいです。
ただラバーソールの中にもドレッシーに見せるために凹凸をなくしツルツルにしたソールもあります。この場合例えラバーソールといえども凹凸のあるソールと比較した場合滑りやすくなります。
もし滑りにくい革靴をあなたがお探しならまずソールの形状を確かめることをおすすめします。
耐摩耗性があり実用的
耐摩耗性というのは摩耗することに耐えるという漢字のままの意味なのですが、分かりやすく言い換えますとレザーソールの場合素材が革のため地面と擦れるたびに革が削れていきます。
それは当然のことなのですが、あまり削れてしまうとレザーソールに穴が空いてしまったりすることもあります。
これは決して不良品というわけではなく当然のことです。それに対しラバーソールは削れにくくレザーソールと違い長持ちします。このことを「耐摩耗性」と言います。
外回り営業職の方などよく歩く方にとって耐久性のあるソールというのはかなり大事な条件だと思います。そのようなお仕事をされている方はラバーソールをお選びいただくことで1足を長く履くことができます。
雨にも強い
雨に強いというのはマッケイ製法やグッドイヤーウェルト製法という構造的な話は除き、「素材」のことを指します。ラバーという素材は雨を直接吸い込むことがないためラバーから水が染みるという現象は起こりません。そのため雨の日用の靴として販売されている革靴はラバーソールで作られています。
ラバーソールのデメリットは?
カジュアルな雰囲気になる
ラバーソールはレザーソールと比較した時どうしてもカジュアルな雰囲気になることは避けられません。ラバーソールの中にも極力薄いソールに仕上げたものも多くありますが、弾力性やクッション性を求める革靴はラバーソールの厚みをしっかりととっているものが多いです。
レザーソールより重くなることがある
ラバーソールの種類にもよりますがレザーソールと比較した場合重くなってしまうことがあります。手で持つと少しずっしりとした感じがし「これを履いたら足が疲れるのでは?」と思ってしまう方もいらっしゃると思いますが、実際しっかりフィットしたサイズを履くことで手で持った時よりも重さは感じにくくなります。
「少し重いかな」と思うラバーソールの革靴も思ったよりも重くはないので一度足入れしてみることをおすすめします。
通気性が悪い
通気性が悪いというのはラバーという素材の特徴でもあります。ラバー自体が水も通さず空気も通さないので一般的にはラバーソールは通気性が悪いと表現されます。ラバーソールの中でも、ゴアテックスサラウンドの革靴は通気性が良い作りになっているのでもし「ラバーソールが良いけど、通気性は良い方がいい」という方はゴアテックスサラウンドをおすすめします。
レザーソールのメリット・デメリット
レザーソールのメリットは?
通気性の良さ
何と言ってもレザーソールは革で作られているので通気性は抜群にいいです。日頃革靴を履くと蒸れてしまうのが心配という方は、レザーソールでなおかつライニングも全て革で作られているものを探して下さい。汗をしっかりと吸ってくれさらに蒸気を逃してくれます。
返りが良い
「返り」という言葉は普段の生活の中では使わないと思いますが、「返り」がいいというのは言い換えると「屈曲性」があるということです。レザーソールは足を返した時一緒に曲がってくれます。そのためしっかりと革靴自体が足についてくる感じがするのです。
逆に「返りが悪い」というのは革靴が足と離れてしまいついてこないことを言います。この表現はレザーソールであってもトリプルソールなどソールの厚みがある革靴の場合「返りが悪い」という現象が起こります。
クラシックドレスの代表的なソール
昔ながらのクラシックドレスはレザーソールを採用していることが多いです。近年新しく作られたモデルを除きALDENやCrockett&Jones、JOHN LOBBなどメインはレザーソールになります。
スッキリとしたシルエットにスマートなメスウェルト、またメスチャネルやヒドゥンチャネルなどソールのステッチを隠す仕様もできるためラバーソールよりもドレッシーな雰囲気を作りやすいです。
レザーソールのデメリットは?
雨に弱い
ラバーソールに相反する特徴を持つレザーソールは素材が革のため、雨の日にレザーソールの革靴を履けばどんどんソールが水を吸ってしまいます。そして濡れたソールはより滑りやすくなります。レザーソールの中でもマッケイ製法の場合水が靴の中に侵入しやすく、ダシ縫いのステッチから雨水がすぐに侵入します。
摩耗しやすい
耐摩耗性がラバーソールより劣るため歩けば歩くほどレザーのソールは削れていきます。特にダブルソールやトリプルソールの場合返りが悪いためつま先部分はあっという間に削れてしまうこともあります。
レザーソールのつま先が削れてしまう現象をお客様は時々「私の歩き方が悪いから削れてしまった」と自分を責めるようなことを仰る方もいますが、レザーソールの場合歩き方というよりもそういう特徴を持った素材だと思っていただいた方がいいです。決してあなたのせいでレザーソールのつま先が削れてしまったのでありませんので、落ち込まないで下さいね!
ソールが濡れたまま放置できない
雨の中帰宅し革靴を脱いで「ただいまー!」と家の中に入りたい気持ちはよく分かりますが、ちょっと待って下さい!レザーソールの場合濡れたまま革靴を放置するとカビが生えてしまう危険性があります。
「カビ?」と思ったあなたに特別にカビの生えた革靴の写真をお見せしますね。濡れたまま放置するとカビが繁殖する条件に近づきます。ピッタリと条件が合うとカビが生えてしまい革靴を蝕んでしまうのです。一度カビが生えてしまうと大変厄介なため、カビが生えない工夫やお手入れをすることをおすすめします。
レザーソールはお手入れが必要!!
レザーソールはあくまでレザーですので、お手入れが必須になります。お手入れをすることによりレザーソールは長持ちをします。愛着のある革靴を長く履くためにも靴磨きをする時にソールの状態もチェックすることをお忘れなく。
レザーソールにはデリケートクリームを塗ってもいいのか?
レザーソールの場合、ソールもケアすることは当然なのですが何を濡れば良いのかという疑問が浮かぶと思います。私はソール専用のサフィールのオイルを使用していますがソールケアは毎回の靴磨きでするものではないので用意がないという方がいらっしゃると思います。
そこで代用できるものはないのか?という疑問をお持ちの方に「デリケートクリーム」をおすすめします。デリケートクリームで済むならなぜソール専用を使うのかと思いますよね。
デリケートクリームでもダメではないのですが、デリケートクリームの場合成分によっては滑る可能性があるのです。
ワックス成分は表面を艶々にしますが、そのような成分が入っているクリームをソールに塗った場合外を歩いていてツルッと転んでしまうかもしれないので出来る限りデリケートクリームの中でも艶出し成分がほとんどないサフィールのデリケートクリームを薄塗りするくらいであれば大丈夫です。
雨と革靴
総合的に考えると雨の日に履く革靴のソールはラバーソールが適しているといえます。その中でもゴアテックスの革靴は雨を侵入させないようにゴアテックス素材を革靴の内側に使っているため安心です。
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有名なところではリーガルやマドラスなどはゴアテックスの革靴を多数販売しており選びやすくデザイン性もあるのでお気に入りが見つかると思います。
もしまだゴアテックスの革靴をお持ちでない方はラバーソールのグッドイヤーウェルト製法がおすすめです。
グッドイヤーウェルト製法はマッケイ製法とは違い中底は縫わずウェルトを縫っているため直接靴の中に雨水が侵入することはないです。しかし長時間雨にさらされているとアッパーをつたって靴の中が濡れてしまうことはありますので注意して下さい。
ソール選びは結構重要!!
今回はソール素材にポイントを当ててお話ししました。靴屋としては新しい革靴を購入する際にデザイン性よりもソール素材は重要なポイントだと思っています。まず革靴の使用目的からソール素材を選んでいただくと革靴が選びやすくなります。
私は雨が降っている時や降りそうな時はラバーソールの革靴を履きますし、晴れている時は歩きやすいレザーソールの革靴を選びます。
仕事に追われ家事に追われ、やることだらけの現代人としては時間を無駄に浪費しない方法を選ぶことで少しだけ楽に暮らせると思います。
そのためのラバーソールだと思っていただいても良いかと思いますので、次回革靴を選ぶ際はソールの素材にも注目して下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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