「靴紐が切れると縁起が悪い」なんていうジンクスもありますが、靴紐は消耗品のため長年使っていれば切れることもあります。切れてしまった靴紐はすぐに交換したいものですよね。しかし、いざ革靴から靴紐を抜いてみると「あれ?この靴紐どうやって通っていたの!?」と元に戻せなくて困ってしまった方もいらっしゃると思います。
“靴紐を抜く”というのは靴紐が切れた時か、靴磨きをする際に靴紐を取り外して磨く場面くらいしか日常ではないでしょう。つまり靴紐を取り外すというのは日常によくあることではないのです。そのため靴紐がどのように通っていたかを忘れてしまいますよね。今回は誰でもできる紳士靴定番の靴紐の通し方をシェアします。
靴紐を選ぶ
「靴紐下さい!」と靴屋へ行き販売員にお願いしたとしても通常「何センチの靴紐がよろしいでしょうか?」と聞かれます。
ビジネスシューズ用の靴紐をお探しであっても何種類もの靴紐が用意されていますのでハッキリと「75センチの黒のロー引きの靴紐を下さい!」と詳しく伝えることで販売員はすぐに在庫の確認をすることができます。
「え?種類があるの?」と思いましたか?あるんですよ、靴紐にも種類が。
靴紐の種類
靴紐には複数の種類がありたくさんの靴紐から選んで購入する必要があります。ここでは簡単にその種類についてご説明します。
ロー引きとガス紐
ロー引きとはロウで加工されている靴紐で、耐久性があり艶感もあるのでドレッシーです。ガス紐とは編み込んであるためほどけにくいという特徴があります。表面も少しふっくらとしておりカジュアルな印象になります。
平紐と丸紐
平紐と丸紐というのは靴紐の形状を示しています。字の如く「平紐」とは平らな紐を指し、「丸紐」とは丸い紐を指します。ドレスシューズでは丸紐が多く使われていますが少しカジュアルな雰囲気のドレスシューズでは平紐が使われていたりします。
靴紐の形状一つで大分雰囲気が変わるのでイメージチェンジしたい場合などにも有効です。
靴紐の長さ
とあるようにシューホールの数によっておおよその靴紐の長さは決まっています。
「靴紐が欲しいけど測り忘れちゃった!」という時は靴紐を交換する靴のシューホールの数が分かれば購入することができます。ここでいう靴紐の長さは“目安”ですのでメーカーが変わると若干変わります。
- 2〜3個穴用 サイズ 56センチ
- 3〜4個穴用 サイズ 66センチ
- 4〜5個穴用 サイズ 75センチ
- 5〜6個穴用 サイズ 90センチ
- 6〜7個穴用 サイズ 120センチ
シューホールの数は例えばプレーントゥの外羽根の写真の革靴は5つの穴があるため約75センチの靴紐を使用することができます。
しかし同じ5つの穴の革靴であっても外羽根と内羽根で長さが変わることがありますので心配な方はやはりしっかりと計測してから購入していただく方が良いでしょう。こちらはコロンブスの靴紐のパッケージより転載しています。
Zapatro(ザパトロ)の靴紐はこのような表記があります。
- 2〜3個穴用 サイズ 55センチ
- 3〜4個穴用 サイズ 65センチ
- 4〜5個穴用 サイズ 75センチ
- 5〜6個穴用 サイズ 85センチ
- 5〜6個穴用 サイズ 90センチ
- 6〜7個穴用 サイズ 110センチ
- 6〜7個穴用 サイズ 120センチ
どのメーカーも長さの目安に大きな差はないためおおよそこれくらいと覚えていてもらえるといいと思います。
靴紐の色
革靴の色によって靴紐は様々な色が使われます。ビジネスシューズでは黒い革靴には黒い靴紐、茶色の革靴には茶の靴紐が使われていることが多いですが、カジュアルシューズは革靴の色自体も黒と茶に限らないためもっと多くの色の靴紐が存在します。
もともと黒や茶の靴紐が使われていた場合もあえて別の色に変えてみるというのも面白いと思います。靴紐を交換するだけで革靴全体の雰囲気も変わりますので今の革靴に飽きてしまった方は買い換える前にぜひ靴紐を違う色に変えてみてはいかがでしょうか?
靴紐の先端の金具
アグレット、シューレースチップといわれる靴紐の先に取り付ける金具です。この金具を取り付けることで靴紐の先端がほつれたりすることを防いでくれ穴に通しやすくなります。
紗乃織靴紐(さのはたくつひも)は、元々このアグレットが取り付けられています。この紗乃織靴紐の特徴は職人が1本1本を手作業で作り上げているおしゃれで高級な靴紐です。
ケア用品店では“オーダーシューレース”というものあり自分の好きな色、長さ、アグレットを取り付けてもらえます。特殊な靴紐の色で既製品で見つからない場合はこの“オーダーシューレース”がおすすめです。
靴紐を通す
靴紐を選び終わりましたら実際に新しい靴紐を靴に通してみましょう。本当に簡単なので拍子抜けしてしまうかもしれませんがお付き合い下さい。この写真の向かって左足はシングル、右足はパラレルで通してあります。しかしパッと見同じに見えませんか?シングルとパラレルは見た目には大差はないのですが、緩める時などに差が出ます。
シングル
シングルはとてもシンプルな通し方です。
一番手前のつま先に近いシューホール(穴)に靴紐を通します。この時靴紐の長さを片方だけ長めにとっておくと後から左右の長さの調節がとても楽になります。私は靴紐を左右三分の一と三分の二くらいの長さに分けて通し始めます。
先ほど短く残した靴紐の端をくるぶしの近くのシューホールに下から上に向かって通します。この時対角になるように通します。
そうするとこの写真のような状態になります。一番手前に通し、くるぶしの近くの片方のシューホールに通っている状態ですね。
次につま先側の靴紐の端を持ち内側から外側に向けて通します。この時も体格になるように通します。あとは同じことの繰り返しになり、今通した靴紐の先端を対角のシューホールに下から上へと残り全てのシューホールに通します。
全てのシューホールを通し左右の長さを整え蝶結びをすれば完成です!簡単でしょ!?片足数十秒で終わりますね。
パラレル
パラレルは左右非対称になりにくく、ほどく時も左右どちらの靴紐を引っ張っても緩みますので迷いません。
パラレルもシングル同様につま先側のシューホールにまず靴紐の先端を通します。パラレルはシングルと違い最初に大体左右対称の紐の長さにしておくと便利です。
片方の靴紐の端を一番近いシューホールの対角に下から上へと通します。
私は効率とスピードを求めるため左右交互にやりません。そのまま今通した靴紐をシューホールを一つ空けて通します。
そして一番くるぶしに近いシューホールに下から上へと通します。
今は片方の靴紐は通しきった状態です。次はもう片方の靴紐を残されたシューホールに通していきます。
最後は下から上へ通し、左右の靴紐の長さのバランスを整え蝶結びをすれば完成です!
個人的な好みでいえば左右の靴紐の長さがバラバラにならないパラレルが断然好きです。皆様はどちらがお好みでしょうか?シングルもパラレルも簡単なのでぜひ挑戦し好きな靴紐の通し方を見つけて下さい。
経験はあなたの価値になる
今回は靴紐の交換についてのお話でしたがいかがでしたでしょうか。たかが靴紐ですが何か新しい発見はありましたか?今はYouTubeやネットで自分の知らないことを調べて知識を得ることは簡単にできる便利な世の中になりましたが、ネットで知識を得ただけで全てを知ったつもりになっている方が多いことも事実です。
紳士靴販売員をしていますと「ネットではこう書いてあった」と堂々と披露される方がいます。しかし一度冷静になって考えて欲しいなと思います。ネットの情報は事実だとしてもあなたの解釈が間違っていた場合は間違った情報としてあなたの脳内にインプットされます。ネットは一方通行が多いのであなたの解釈が例え間違っていたとしても訂正してくれないのです。それを踏まえるとネットだけに頼った知識というのはかなり脆弱であるといえます。知らないことをすぐに調べることは大変良いことですが調べたらそれが本当なのかあなた自身で検証して欲しいと思います。
つまりあなたに経験して欲しいのです。あなたが経験したことが真実です。それほど経験というものは重みがあり何よりもあなた自身の価値であることは疑う余地がありません。
私は靴磨きや革靴に対して今まで経験から得た知識をこのブログでシェアしているのですが、これを読んで下さっている方が読んだだけで終わることなく実際に自分で経験し自分のものにしてくれることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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