デリケートクリームはどんな役割を果たすかご存知ですか?今回は元靴磨き職人HIROsophyが革に対し重要な役割を果たす“デリケートクリーム”について深く考えていきたいと思います。知っている方もこれから使おうかと考えている方も、新しい発見があるかもしれませんので是非ご覧下さい。
元靴磨き職人の私は今まで記事にしてきた「靴磨き」では“デリケートクリーム”を積極的には紹介してきませんでしたが、実際はデリケートクリームをよく使っています。簡素化された靴磨きを紹介していたためデリケートクリームは省くことが多かったですが本当は使っていただきたいと思い今回はデリケートクリームの魅力を目一杯紹介します!
デリケートクリームは化粧でいう化粧水
“デリケートクリーム”はほぼ水です!「え!?水を塗って何の意味があるの?」って思いますよね。もちろん成分は水だけではなく油脂なども含まれていますが、他の靴クリームやレザーローションなどと比較すると微量です。
そのため使い心地はサラッとしており、ほとんどベタつきがありません。お使いいただける素材はスムースレザーのソファ、ジャケット、バッグ、財布、革小物など革物全般です。特にデリケートレザー向きだといえます。効果は保革です。塗ることで栄養を与え表面には薄い膜ができ革を守ってくれます。
デリケートクリームが使えない素材とは
- エナメル素材
- 起毛(ヌバック・スエード・ベロア)
- テキスタイル
- 合成皮革(塗ることに意味がないため)
デリケートクリームの使い方
ケア用品ブランドが各社“デリケートクリーム”という名称の商品を販売しています。レザークラフトのコーナーやシューケアのコーナーでお目にかかった方が多いと思いますが、この“デリケートクリーム”は一体どんな場面で使うのかご存知でしょうか?
ここではデリケートクリームの主な用途とデリケートクリームの効果についてお話していきます。
靴磨きの時の下地として
デリケートクリームを使うタイミングはクリーナーで汚れを落とした後に使います。この写真はポリッシュ(ワックス)を落とし革の表面がパサパサしている状態です。ここで強い油を入れるのではなく刺激の少ないデリケートクリームを使うことで革への負担も少なく、さらにクリーナーを使った後は毛穴が開いているので水分の多いものの方がよく吸収します。つまりデリケートクリームを塗るというのは開いた毛穴に浸透し潤いを与えてくれる効果があるのです。
私が靴磨きで絶対にデリケートクリームを使用する時は革靴の色が薄い場合です。ライトブラウンやベージュなどの色の場合クリーナーの後に靴クリームを使用すると一気に色が入り想定よりも濃くなったりまた色ムラになることがあるため、デリケートクリームを塗ることで靴クリームを革が吸収してしまうことを防ぐために使用します。どちらかというと私のデリケートクリームの使い方は「一気に油分が浸透することを防ぐ」という目的のために使用することが多いです。
鞄・財布などの革小物に
鞄や財布などの革小物には靴専用で販売されている靴クリームなどは使えません。そのためデリケートクリームやレザーローションなどをお手入れの時に使います。
「色落ちした鞄などはどうやって補色するの?」と思うかもしれませんが、靴クリームで補色するとお洋服などに色移りしてしまいます。そのため「サフィールのレノベイティングカラー補修クリーム」や「アドカラー」「コンシーラー」などを使うことになります。樹脂コーティングタイプであれば乾燥後は色移りしませんので安心です。
水や汚れを吸収してしまうヌメ革をコーティング
ヌメ革とは植物タンニン鞣しをし染めていないためベージュっぽい色をしており経年変化が激しく持ち主の扱いにより個人差が出る革です。お手入れをしなかった場合は手垢などで黒く汚れたりシミになったりと決して綺麗な感じではないですが、しっかりヌメ革をお手入れしてあげることでアメ色に変化し味わい深い色になります。
このヌメ革は水や汚れなどをよく吸収する革のため通常の油分多めのクリームを使った場合一気に色が暗くなり雰囲気を変えてしまいます。そのためヌメ革に使えるクリームは限られており油分が微量の“デリケートクリーム”をおすすめします。
デリケートクリームを塗ることで若干色は暗くなりますがヌメ革の表面に薄いコーティング(膜)を張ることで水や汚れの吸収は何も塗らないよりかは大分変わります。
コードバンケア時の摩擦を抑えるために
コードバンのケアをする時にまず傷をアビースティックやこくり棒などを使いならします。何もつけずにアビースティックなどで押し当て擦ると大きな摩擦が生まれるため、毛を寝かす目的も含めデリケートクリームを緩衝剤のような感じで使います。デリケートクリームによりコードバンの毛は柔らかくなりアビースティックなどで押し込むことで表面の傷はなだらかになりケアがしやすくなります。
各メーカーのデリケートクリームの特徴
ジャパンメイドのコロンブス ブートブラック デリケート革専用クリーム
- 主成分:ろう、油脂
- 種類:乳化性
- 色名:ニュートラル
- 容量:55g
コロンブスのブートブラックデリケート革専用クリームはベタつきが少なく潤滑性に優れたスクワランオイルを使用しています。クロスにとり全体的に薄く塗り伸ばし乾燥後に柔らかな布で磨きます。
たったこれだけで革に栄養を与え自然な艶も出ますので、複雑なお手入れは苦手だけれど革小物からお手入れをしてみたいという初心者の方も簡単にお使いいただけます。
大容量も販売中モゥブレイ デリケートクリーム
- 成分:ラノリン、ろう、有機溶剤
- 種類:乳化性
モゥブレイのデリケートクリームは主に仕事で使っていましたが、業務用かと思うほど大きなサイズも販売しており助かりました。
使い心地はクリームというより本当に水に近いイメージですぐ革に馴染みます。塗った直後は色が変わりますが乾燥すると何事もなかったかのように元の色に戻ります。
もっちりするモゥブレイ リッチデリケートクリーム
- 成分:アボガドオイル、有機溶剤
- 種類:乳化性
- 色名:ニュートラル
- 容量:50ml
こちらのモゥブレイリッチデリケートクリームも仕事で大変お世話になったクリームです。使い心地はクリームというよりジェルです。それほどトロトロとしており薄く塗ることが可能です。
森のバターともいわれるアボガドから丁寧に採油したアボガドオイルを使用し約97%が天然成分で作られているというから革に良いわけですね。
王道のサフィール デリケートクリーム
- 成分:ホホバオイル、小麦プロテイン
- 種類:乳化性
- 色名:ニュートラル
- 容量:50ml
元靴磨き職人、サフィール信者が一番よく使っていたデリケートクリームはもちろんSAPHIRです。様々なメーカーのデリケートクリームを使いましたが、このサフィールのデリケートクリームは本当に艶が出ません。それは悪いことではなく艶が出ないクリームが珍しいため重宝していました。「マットに仕上げたい!」という革靴や鞄の場合はこのサフィールのデリケートクリームを使うことで想像通りのマットな仕上がりにすることが可能ですよ。
コロニル デリケートクリーム 50ml
- 成分:有機溶剤
- 種類:乳化性
- 色名:ニュートラル
- 容量:50ml
コロニルのデリケートクリームの特徴は汚れを落とすクリーニング力とデリケートな革を傷めない保革力です。ヌメ革、アニリン染め、ナッパレザーなど繊細な革をお手入れするには最適です。クリーナーを革に使うことが慣れずに怖いと思う方はこのコロニルのデリケートクリームから始めてみるとよいでしょう。失敗なく汚れを落とすことができます。
元靴磨き職人が絶対おすすめする効果抜群のケア用品!!
黒色もあるコロニル アニリン
- 成分:アロエヴェラ成分、油脂
- 種類:乳化性
- 色名:ニュートラル・ブラック
- 容量:50ml
コロニルのアニリンは驚くほど万能なのでこの機会に紹介させていただきます!様々なメーカーの商品を使う中でサフィール信者の私も舌を巻いた優秀なクリームなのです!
何が優秀かといいますと①シミになりにくい②艶がハッキリ出る③汚れも落ちるという靴磨きをする上で超重要な3点を網羅しているからです!靴磨きをするとき慎重になってしまう場面は幾度もありますが、やはり一番は色の薄い革靴を磨く時でした。色が薄い革靴を磨く時一番心配するのが“色ムラ”です。
もちろんデリケートクリームから使えば問題ないのですが、靴磨きは時間との勝負です。目の前にお客様が座って待たれている中「どうすれば早く綺麗になるのか」を考えるのが職人です。そこでデリケートクリームという工程をコロニルのアニリンに差し替えることでデリケートクリームにはない艶も出すことができ時間の短縮にもなります。デリケートクリームとは対照的ですが艶を出したいという時はアニリンを使うことをおすすめします。
驚くほどしっとりするコロンブス ブートブラック リッチモイスチャー
- 成分:ろう、油脂、乳化剤、水
- 種類:乳化性
- 容量:100ml
この成分に驚いて下さい!このコロンブスブートブラックリッチモイスチャーは「天然アルガンオイル」を使用しているのです!!
化粧品やヘアケア用品などに使われているあのアルガンオイルですよ。表現が正しいのかは分かりませんが「贅沢」なケア用品なのです。人間の肌に良いものは革にも良いということですよね。
私はこのリッチモイスチャーを仕事でよく使っていましたが、革がもっちもちになります!個人的な感想になりますが、オイルの浸透力がクリーム類とは違い早く深く浸透してくれ赤ちゃんのほっぺのような感触になるのです。さすが…コロンブス、本当に素晴らしいです。これを使った時様々なケア用品を使ってきた私は闘いではないですが“完敗した”と思いました。それくらい衝撃を与えてくれるケア用品です。
影の立役者“デリケートクリーム”を使いこなす
デリケートクリームは「最低限揃えて欲しい靴磨きの道具」には含まれないことが多いですが、ご紹介した通りめちゃくちゃ重要です。
特に仕事で靴磨きをするとなると状態や色など様々な革靴が運び込まれてきます。中には瀕死の状態の革靴もあり、迂闊に油分多めのクリームを塗ると間違いなくシミになりますし色ムラになった場合は簡単には元に戻せません。そのため必ずデリケートクリームを塗ってから靴クリームや少し油分の多いクリームを塗ります。つまりデリケートクリームはなくてはならないクリームの一つなのです。
そして大きなメリットとしてスムースレザー全般に使えるという点です。例えば車のシートが皮張りの場合少なからずお手入れをしてあげる必要がありますが、通常の油分多めのクリームを塗ると若干ベタつきもありお洋服が汚れないか心配ですよね。そんな時に迷わずデリケートクリームを使って欲しいのです。例え靴磨きをしない方でも皮張りのソファをお持ちならデリケートクリームを使いましょう!そう考えると一家に一個デリケートクリームがあってもいいかなぁと思いますよね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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