今回は革靴の製法の中でも人気のあるグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の違いをシェアしたいと思います。この二つの製法は革靴を選ぶ時に重要になります。革靴好きにはぜひ知っていて欲しい製法の違いを分かりやすく解説します。
グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法は「実際のところどっちがおすすめなの?」とお思いの方も多いと思います。紳士靴の販売員として、また革靴をバラし修理に携わった者としてグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の“おすすめポイント”をご紹介します!
革靴の製法
パッと見ではこの2足が違う製法で作られているということに気づきにくいと思いますが、実はAlfred Sargentはグッドイヤーウェルト製法で作られており隣の黒いファイブスターはマッケイ製法で作られています。
パッと見ただの革靴にしか見えませんが、製法が違うと何が変わるのでしょうか?様々な角度から製法の違いを考えてみたいと思います。
グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の歴史の違い
同じ革靴の製法ですが、それぞれ見た目が随分違います。そこには深い理由があったのです。そしてファッションとしての文化も大きく関係しています。
グッドイヤーウェルト製法の歴史
19世紀後半、ハンドソーン・ウェルテッドといわれる手縫いの製法をもとに製靴機を発明したチャールズグッドイヤーと細革のウェルトに由来されたもの。JOHN LOBBやTricker’s、Crockett&Jonesなどはグッドイヤーウェルト製法で作られている。
マッケイ製法の歴史
もともとはイタリアのマルケ地方の伝統技法のマッケイ製法ですがアメリカのマサチューセッツ州でライアン・ブレイクがマッケイ製法の製靴機を開発。そのためマッケイ製法はブレイク製法とも呼ばれる。その後ゴードン・マッケイが機械の権利を買取改良を重ね今のマッケイ製法の原型ができた。本格的な製法が確立されたのは1858年。
グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の構造の違い
グッドイヤーウェルト製法の構造
簡単に言いますと、アッパーと中底とウェルトを掬い縫いしウェルトとアウトソールを出し縫いをする製法です!
ウェルトのステッチは出し縫いです。
マッケイ製法の構造
イタリアの伝統的な製法でアッパーと中底とアウトソールを一度に縫い付ける製法です!
コバに使われている部材は押縁といい細い革をアッパーとアウトソールの間に挟んでいます。つまり飾りです。
アウトソールのステッチの違い
アウトソールを見てもステッチが表に出ていないものもありますが、今回はオープンチャネルのアウトソールについてお話します。
グッドイヤーウェルト製法のステッチ
グッドイヤーウェルト製法のアウトソールを見てみるとヒドゥンチャネルやメスチャネルでなければ(オープンチャネル)写真のようにステッチが見えます。このステッチのピッチはマッケイ製法に比べ細かいです。
グッドイヤーウェルト製法の特徴はウェルトを縫っているためアウトソールのステッチの位置はやや外側寄りです。
やや外側寄りを縫うためTricker’sなどで使用されるダイナイトソールはグッドイヤーウェルト製法のために作られたといっても過言ではありません。
マッケイ製法のステッチ
写真はマッケイ製法で作られた革靴ですが前半分はヒドゥンチャネルのためステッチが隠れています。しかし踏まず部分を見てみるとステッチが見えます。このステッチは革靴の中側から貫通しているステッチです。
そしてこのステッチのピッチはグッドイヤーウェルト製法の縫い目より広くなります。理由は中底を直接塗っているためピッチの間隔を狭めてしまうと中底に切り取り線のように穴があき切れてしまう恐れがあるためピッチの間隔は広くなっています。
革靴の中側を縫っているためアウトソールに出ているステッチの位置はグッドイヤーウェルト製法の革靴と比べやや内側に寄っています。
縫いの違い
「どうやってグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法を見分けるの?」と疑問に思っている方もいると思いますので簡単な見分け方をご紹介します。製法の特徴は縫い方に一番表れています。この縫い方を覚えればグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の違いを一瞬で判別できます。
グッドイヤーウェルト製法の縫い方
中底とアッパー、ウェルトの3つを掬い縫いしウェルトにアウトソールを出し縫いで縫う製法がグッドイヤーウェルト製法です。
ウェルト部分を塗っているため革靴の中側にはステッチはありません。
アッパーとアウトソールは直接縫われていないため掬い縫いをした中底とアッパーとウェルトはジョイントしているイメージです。
マッケイ製法の縫い方
アッパーと中底(無い場合も有り)を直接アウトソールにアリアン縫いで縫い付ける製法がマッケイ製法です。
そのため革靴の中側をみるとアリアンのステッチが確認できます。このステッチがアウトソールまで貫通して縫われています。そのためマッケイ製法は雨が染み込みやすいのです。
製法別による履き心地と特徴
ここが一番皆様が気になるところではないでしょうか?実際履いてみてどうなのかというところを本音を交えてお話します!
グッドイヤーウェルト製法の特徴
- ガッチリ押さえられているような圧迫感が履き始めにある。
- 中物にはコルクなどの天然なものが使われておりクッション性が良いため長時間歩いたり立っているお仕事をされている方には非常に向いている。
- 沈み込みにより履いている方の足形が取れ他にはないフィット感が後から得られる。
- 最初は硬く感じられるが馴染むと抜群の履き心地になる。
- 中底の沈み込みもあるので試し履きした時のサイズ感とは別物なのかと思うほど変わる。
- オールソール交換をすることができるため長く愛用したい方におすすめ。
- たくさんの部材が使われ工程も複雑なため値段は高め。
- ソールからの水の侵入はしにくい。
マッケイ製法の特徴
- グッドイヤーウェルト製法の革靴よりも軽量。
- 馴染みがよく足を包み込むような履き心地。
- 屈曲性が良い。
- マッケイ製法は革靴特有の「最初は硬くて歩きにくい」という感じはあまりなく最初から履きやすいものも多い。
- 靴底が薄く感じられる。
- オールソール交換の回数はグッドイヤーウェルト製法の革靴よりも少なく大体1回からできても2回程度。中底を貫通して縫っているため何度もオールソール交換をすると中底には複数の穴が空き壊れてしまう可能性があるため。
- コバの張り出しが少なくスッキリとした印象。
- ソールにはアリアンがかけられているため水の侵入はしやすい。
製造コストはグッドイヤーウェルト製法の革靴に比べ安価。
クッション性や耐久性を求めるのならばグッドイヤーウェルト製法、すっきりとしたフォルムで返りの良さを求めるのであればマッケイ製法ということになります。革靴は洋服に合わせるものなのでイタリアのスーツや細身のファッションをするのであればマッケイ製法がおすすめですし、肩幅のあるスーツやガッチリとしたファッションをするのであればグッドイヤーウェルト製法がおすすめです。
モノを大切にすると心が満たされる
今回はグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の違いについてお話しましたが、私個人としてはグッドイヤーウェルト製法の革靴が好きです。理由はやはりコルクのクッション性です。一日履いても疲れないですし、足に馴染んだ時のフィット感と履きやすさは言葉では言い尽くせない程です。
グッドイヤーウェルト製法の革靴は長持ちするというお話もしましたが、やはり我が子のように可愛い革靴は私と一緒に成長して欲しいものです。毎日我が子に愛情を注ぎ大事に育てることでエイジングされ大人の魅力を醸し出してくれます。モノを大切にすると心が満たされる感じがするのは私だけではないでしょう!きっと皆様も同じ気持ちでいることだと思っています。
この愛情は一方通行ではなく革靴に愛情を注げば必ず返ってきます。たくさんの我が子が元気に成長している証をこれからもブログに記したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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